梅沢富美男の名人10段昇格句「嬰児(みどりご)の 寝息の熱し 砂日傘」を考える。
2018年7月19日放送の「プレバト！！」。
俳句のお題は「砂浜」でした。
梅沢富美男さんが、以下の句を詠んだところ、
夏井いつきさんが絶賛し、添削はなしで、
名人10段へ昇格しました。
「嬰児(みどりご)の 寝息の熱し 砂日傘」
ご本人の句想は、次の通り。
《嬰児（みどりご）っていうのは
お芝居で言う「乳飲み子」。
おっぱいを飲んでる生まれたばかりの赤ちゃん。
海でお兄ちゃんたちは遊んでる。
お母さんと二人で砂日傘の中で
抱っこされながら寝ている。
赤ちゃんは抱くと熱い。それを表現した》
夏井先生の講評は、
《「嬰児」はほんとに小っちゃい赤ちゃん。
「寝息」「熱し」が出てくる。正直言うと
「嬰児の寝息」まではつまらない普通の句だと思う。
「熱し」で病気か、熱が出ているかもと思う。
そういうところを伏線にしておいて、
最後に季語「砂日傘」が出てくる。
色とりどりのビーチパラソルが並んでいる、
砂浜、海、熱い太陽。一気に季語で
広がってくる瞬間に、当たり前の句が
当たり前でなくなる。
こんなところで赤ちゃんが寝てるって。
でもこの「熱し」というのは寝息の熱しだけでなく、
砂日傘がある場所の熱さや夏という季節も感じる。
「熱し」はかなり近いところでその息を感じてないと
言えない。お母さんが抱っこしているのかなと思う。
大きいお姉ちゃんお兄ちゃんはそこらへんで泳いでいる。
全部の光景が17音の中に入る。「熱し」と終止形で
ピシッと切ったことによって、カットが切れて
季語が見事に立ってくる。10段おめでとう。》
という訳で添削なしで昇格しました。
ネットなどを見ると、この句の情景は、
砂浜で砂日傘の下とは言え、
生まれたての赤ちゃんを寝かせるのは、
幼児虐待ではないかとして、共感できない
などと批判している人もいるよう。
しかし海水浴に行って、太陽光を遮った
ビーチパラソルの下で、母親（なり大人）が
見守った状態で赤ちゃんがいる、眠っているのは
必ずしもおかしなことではないのでは。
ここを非難するのはどうかと思います。
まあ異常気象、酷暑の昨今では、
海水浴に外に連れ出すことさえ
幼児虐待になるのかもしれませんが……。
個人的にはこの句の情景よりも、
気になったのは助詞の使い方です。
（てにをは）
具体的には、「嬰児の 寝息の」と
「の」が続いていること。
これを変えた方がよいのでは
と思ったのです。
オリジナル （平板な気がする）
「嬰児(みどりご)の 寝息の熱し 砂日傘
中七 「は」に （「寝息」がたつ）
「嬰児(みどりご)の 寝息は熱し 砂日傘」
中七 「や」に （「寝息」がさらにたつ）
「嬰児(みどりご)の 寝息や熱し 砂日傘」
上五 「は」に （嬰児が少したつ）
「嬰児(みどりご)は 寝息の熱し 砂日傘」
上五 「や」に （嬰児がかなりたつ）
「嬰児(みどりご)や 寝息の熱し 砂日傘」
上五 「や」に 中七 「は」に
（嬰児がたち、さらに寝息もたつ）
「嬰児(みどりご)や 寝息は熱し 砂日傘」
梅沢さんの《赤ちゃんは抱くと熱い》を表現したい
という句想からすると、
「嬰児(みどりご)は 寝息や熱し 砂日傘」
かなーと思うのですが。
しかし自分なら、最終的に、
「嬰児(みどりご)や 寝息は熱し 砂日傘」
にする気がします。
これがいいかどうかはわかりません。
オリジナルの方が、夏井さんが評したように
「砂日傘」が引き立ち、一気に情景が広がる
感じもします。
いやー、俳句って難しいですね。
ともあれ梅沢さん。
名人10段への昇格、おめでとうございます。
さらに永世名人への昇格を楽しみにしています。
歳時記、《砂日傘・浜日傘・ビーチパラソル 54句》
http://www.haisi.com/saijiki/sunahigasa.htm
砂日傘《夏の生活》
2020年8月13日、追記
《梅沢富美男「えらいことに…」俳句永世名人の胸の内
8/5(水) 7:00配信 日刊スポーツ》
今年の5月、「プレバト！！」で、初の俳句永世名人に。
現在は、句集作りに挑んでいるそう。
目標である傑作句50選まであと
30句もあり、大変とこぼしています。
2021年6月16日、追記
〇偉そうに自分ならこうすると書いた
「嬰児(みどりご)や 寝息は熱し 砂日傘」ですが、
上の五で切れ字がくると、やっぱり嬰児が重くなり、
砂日傘が立ちませんねー。
追記 2023年1月13日
〇最近は、番組を全く見ていないくて、
事情がわからないのですが、このエントリーには、
定期的にアクセスが集まっています。
今日もアクセスが。番組、梅沢さんに何か動きがあったのか。
俳句のお題は「砂浜」でした。
梅沢富美男さんが、以下の句を詠んだところ、
夏井いつきさんが絶賛し、添削はなしで、
名人10段へ昇格しました。
「嬰児(みどりご)の 寝息の熱し 砂日傘」
ご本人の句想は、次の通り。
《嬰児（みどりご）っていうのは
お芝居で言う「乳飲み子」。
おっぱいを飲んでる生まれたばかりの赤ちゃん。
海でお兄ちゃんたちは遊んでる。
お母さんと二人で砂日傘の中で
抱っこされながら寝ている。
赤ちゃんは抱くと熱い。それを表現した》
夏井先生の講評は、
《「嬰児」はほんとに小っちゃい赤ちゃん。
「寝息」「熱し」が出てくる。正直言うと
「嬰児の寝息」まではつまらない普通の句だと思う。
「熱し」で病気か、熱が出ているかもと思う。
そういうところを伏線にしておいて、
最後に季語「砂日傘」が出てくる。
色とりどりのビーチパラソルが並んでいる、
砂浜、海、熱い太陽。一気に季語で
広がってくる瞬間に、当たり前の句が
当たり前でなくなる。
こんなところで赤ちゃんが寝てるって。
でもこの「熱し」というのは寝息の熱しだけでなく、
砂日傘がある場所の熱さや夏という季節も感じる。
「熱し」はかなり近いところでその息を感じてないと
言えない。お母さんが抱っこしているのかなと思う。
大きいお姉ちゃんお兄ちゃんはそこらへんで泳いでいる。
全部の光景が17音の中に入る。「熱し」と終止形で
ピシッと切ったことによって、カットが切れて
季語が見事に立ってくる。10段おめでとう。》
という訳で添削なしで昇格しました。
ネットなどを見ると、この句の情景は、
砂浜で砂日傘の下とは言え、
生まれたての赤ちゃんを寝かせるのは、
幼児虐待ではないかとして、共感できない
などと批判している人もいるよう。
しかし海水浴に行って、太陽光を遮った
ビーチパラソルの下で、母親（なり大人）が
見守った状態で赤ちゃんがいる、眠っているのは
必ずしもおかしなことではないのでは。
ここを非難するのはどうかと思います。
まあ異常気象、酷暑の昨今では、
海水浴に外に連れ出すことさえ
幼児虐待になるのかもしれませんが……。
個人的にはこの句の情景よりも、
気になったのは助詞の使い方です。
（てにをは）
具体的には、「嬰児の 寝息の」と
「の」が続いていること。
これを変えた方がよいのでは
と思ったのです。
オリジナル （平板な気がする）
「嬰児(みどりご)の 寝息の熱し 砂日傘
中七 「は」に （「寝息」がたつ）
「嬰児(みどりご)の 寝息は熱し 砂日傘」
中七 「や」に （「寝息」がさらにたつ）
「嬰児(みどりご)の 寝息や熱し 砂日傘」
上五 「は」に （嬰児が少したつ）
「嬰児(みどりご)は 寝息の熱し 砂日傘」
上五 「や」に （嬰児がかなりたつ）
「嬰児(みどりご)や 寝息の熱し 砂日傘」
上五 「や」に 中七 「は」に
（嬰児がたち、さらに寝息もたつ）
「嬰児(みどりご)や 寝息は熱し 砂日傘」
梅沢さんの《赤ちゃんは抱くと熱い》を表現したい
という句想からすると、
「嬰児(みどりご)は 寝息や熱し 砂日傘」
かなーと思うのですが。
しかし自分なら、最終的に、
「嬰児(みどりご)や 寝息は熱し 砂日傘」
にする気がします。
これがいいかどうかはわかりません。
オリジナルの方が、夏井さんが評したように
「砂日傘」が引き立ち、一気に情景が広がる
感じもします。
いやー、俳句って難しいですね。
ともあれ梅沢さん。
名人10段への昇格、おめでとうございます。
さらに永世名人への昇格を楽しみにしています。
歳時記、《砂日傘・浜日傘・ビーチパラソル 54句》
http://www.haisi.com/saijiki/sunahigasa.htm
砂日傘《夏の生活》
2020年8月13日、追記
《梅沢富美男「えらいことに…」俳句永世名人の胸の内
8/5(水) 7:00配信 日刊スポーツ》
今年の5月、「プレバト！！」で、初の俳句永世名人に。
現在は、句集作りに挑んでいるそう。
目標である傑作句50選まであと
30句もあり、大変とこぼしています。
2021年6月16日、追記
〇偉そうに自分ならこうすると書いた
「嬰児(みどりご)や 寝息は熱し 砂日傘」ですが、
上の五で切れ字がくると、やっぱり嬰児が重くなり、
砂日傘が立ちませんねー。
追記 2023年1月13日
〇最近は、番組を全く見ていないくて、
事情がわからないのですが、このエントリーには、
定期的にアクセスが集まっています。
今日もアクセスが。番組、梅沢さんに何か動きがあったのか。
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