この2019年の夏、フィレンツェ在住の
イタリア人の友人男性が奥さん、子どもと
来日しました。
彼を除く2人は、毎年のように日本に
来ているので、会っているのですが、
彼が来日するのは、久しぶり。
以前、あったのは、自分がイタリアを
訪問した時ですから、6年ぶりくらいです。
そんな彼と奥さんとで、
昨日、江戸東京博物館のレストランで、
遅い昼ご飯を一緒に取りました。
(その後、国技館、旧安田庭園を案内。
月曜日の当日券を求めようと思ったが、
朝、まだ風が強く、交通機関の状況も
わからなかたので、見物は取りやめに)
その席で話題になったのは、
それぞれの健康、そして仕事、
年金問題です。
イタリア人に限らず多いのが、
年金生活への憧れ。
労働を免れる年金生活はとても
よろこばしいものという意識なんですね。
彼もそう。
彼が仕事はどうだと聞いた後、
「お前は、あと何年働いたら年金をもらえるの」
と聞いてきたので、
「日本だと早ければ60歳で繰り上げてもらえるが、
その分、減額される」と答えたら、
「イタリアでは60歳からもらえていたが、それがなんと
21年までに67歳以上に引き上げられることに」。
驚いていたら、さらに付け加えて、
「政府はそれを見直し、62歳以上の国民で、
38年以上の勤続年数があればすぐに年金が
受給できるようになった」と。
つまり上の条件を満たす人なら
62歳で年金を受給できるように。
(年齢と就業年数を足して100になれば受給できるので、
「クオータ100」と呼ばれる、この政策変更により、
条件を満たす多くの人、公務員が退職し、人手不足が
問題に)
けれど彼はまだ年齢も勤続年数も達していないので、
もらえず、さらに公務員でないので、年金額も低いのだと。
今後、政権が変れば
この年金制度もどうなるかわからないと。
彼の奥さんは、彼に向かって、
「将来、年金生活になっても、農民
(彼の家の周囲は畑)になって働かなきゃ」
なんて真剣な目で話しかけたら、彼は、
肩をすくめて、「俺はいつまで働かなきゃ
いけないんだ」と嘆きました。
そして、さらに私に向けて、アドバイスを。
「年金生活になったら、日本からイタリアに
移住すればどうだ。イタリアでは、年金生活者は、
北アフリカのチュニジア、モロッコなどの物価の
安い国に移住しているし」と。
自分が、「イタリアの物価は高い」と反論すると、
「確かにミラノ、ローマなどの大都市では高いが、
田舎の物価は日本に比べて安いから」と。
それを聞いていた奥さんは、「それは日本も同じ。
田舎で暮せば安い。田舎同市なら日本が安いかも。
それより何より、日本の方が医療が充実して安心できる」
と教えてくれ、年金話、移住話は終わりました。
イタリアは日本と同じで少子高齢化が進み、
経済成長も十分でなく、政府の財政は差し迫っているのに、
今の政権はばらまき政策を続けています。
なので、いつ年金、財政が破綻してもおかしくない。
普通に考えれば、年金の額、さらに支給年齢もあがるはず。
年金だけでは生活できない感じになっています。
日本だけでなく、どこの国でも財政は、
厳しくなり、年金生活は昔のように
楽ではないようです。
彼とは昔、車やイタリアのリゾート地の
話なんかしていたのに、年金の話をするような
年代になったんだなーとしみじみ。
20年、30年なんてあっという間ですね。
田村 正之 日本経済新聞出版社 2018年11月26日