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5袋1080円とタイムセールで7袋1080円。

2020年12月15日、渋谷の取引先からの帰り、
千代田線の新御茶ノ水駅から、
都営新宿線の小川町駅に乗り換える
経路の途中に、ドライフルーツ、乾き物を
売っている店が出ていました。

ちょうど、午後5時を回った頃だったのですけれど、
品物を置いている台の前には、5袋1080円との大きめの
値札が置かれていました。

いやー、結構、安いですね。

自分を含む乗り換え客が、大勢、前を通りかかると、
売り子の若い男性が、前に置かれた値札と
同じ大きさのボードをもって、それを振りながら、
声を張り上げていました。

「今ならタイムセールで7袋1080円」。

手に持った値札には確かに「7袋1080円」と書いています。

これを見て、ずいぶん昔のことを思い出しました。

もう20年、いや30年近く前です。
仕事場の先輩と、その時は、
新橋駅のJRと東京メトロ銀座線
との間の通路だったと思います。

やはりドライフルーツ、
おかきの出店が出ていました。

様々な種類のドライフルーツ、
おかき、スルメなどの珍味、乾き物が
同じ大きさの透明な袋に入って、
並べられていました。

人が通りかかると、売り子の男性が、
声を張り上げ、「3袋1000円」
(値段はうろ覚え。消費税がまだない頃)と
がなり立てています。

通り過ぎようとしたら、突然、その男性が、
「今からタイムセール、5袋1000円」と、
言うではないですか。

仕事先からの帰りで、後は家に帰る(もしくは先輩と
どこかに飲みに行く)だけだったので、思わず足を止めて、
出店に近づいていったのです。

そうしたら、先輩に止められ、
少し離れた所に、連れて行かれました。

「なんで店に近寄ったの」

「いや、3袋1000円が5袋1000円になるのでお得だなと。
自分が通りかかって、タイムセールとはラッキーとも
思いました。逃せば損だと」

先輩は、あきれたように僕の方をみて、
「いやー、あきれたやつだな。
まあ世間ずれしていないと
ほめてやった方がいいのかな。
これから話したいから、ちょっとつきあえ」

そう言って、烏森方面にあった、年配の女性が
一人で切り盛りしていた小料理屋に連れて行って、
世間について教えてくれたのです。

「あのな。ああいった所で売っている物の値段は、
タイムセールで下げた値段が、もともとの値段だ。
下げた値段だったまだ高い。先に見せている値段は
おとりの値段。本来の値段を安く思わせるためのものだ」

「大体、お前は、ドライフルーツ、乾き物の質、
またそれに見合った相場を知っているのか」。

知らないと答えると、
「ああしたものの善し悪しは、
素人ではなかなかわからない。
なので質の悪い物を高値で買わされるんだ」

「場所を借りて、期間限定で販売している店は、
いついなくなるかもわからない。それが店舗を
構えている店と違うところ。ちゃんと店を
構えている所は、すぐには逃げられない。
だから、品質と値段が見合ったものを
売らないと、客が苦情を申し立てに来る。
それが信用。まあもっともああした出店でも、
同じ所にずっと来て、出している店は、
信用がないと、次がないから、ちゃんとしているけれど……」

「そうそう。自分が通りかかったらタイムセールに
なってラッキーって言っていたけれど、まあおめでたい。
どこかに何時から何時、タイムセールって書いてあったか。
なかったろう。店の前を通りかかる人が多くなったら、
『タイムセール』って言ってるだけ。ちっともラッキーじゃないから」。

こうして、自分は、商売、
世間というものの一端を
教えてもらったのでした。

でも未だに、ネット、テレビショッピングで、
「今だけ」とか、「期間限定」と言われると、
ついつい買ってしまいそうになります。

先輩から、「まだまだ甘いなー」と叱られそうですね。



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