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瀬戸内寂聴さんの思い出。追悼文の名手の追悼文は誰が。

作家の瀬戸内寂聴さんが
11月9日に亡くなりました。

享年99。

瀬戸内さんのインスタグラムに、訃報が掲載されたとのこと。

10月から体調不良のために入院、加療していたそう。
今年8月下旬に入院した際に、胆のうがんが見つかり、
その摘出手術も受けられていたようです。

瀬戸内さんとは、
今から30年以上も前になりますが、
お仕事で何度かお世話になったことがあります。

京都の嵯峨野の寂庵にお住まい。
東京にいらしていただくのに、
こちらからお迎えにあがる必要がありました。

その際、上司が瀬戸内さんに詳しい方に
相談したところ、「女性より男性。男性も
できるだけ若くて、見目麗しい人がよろしい」
とアドバイスをされたそう。

その助言を受ける前は、自分がお出迎えの
役目を担当するはずだったのですが、
助言後、急遽変更され、外されました。

迎えに行った後輩によれば、
出迎えにあがると始終ご機嫌で、
上りの新幹線の中では、隣の席に座り、
ずっと手を握られていたそう。
いや、自分は見た訳ではありませんが……。

東京にいらして、お話の場に同席。

コーヒーと軽食をご用意していました。
野菜サンドとカツサンド。
カツサンドだけをパクパクと召し上がり、
「肉が大好き。これとお酒が健康の素」と
快活に笑いながらおっしゃっていました。
後に晩年の頃、テレビのドキュメンタリーで、
霜降りの上等な牛肉をすき焼きにし、
シャンパンを飲まれていた姿を拝見。
確かにお酒とお肉が寂聴さんの元気さを
支えていたのだなと納得しました。

最初にお会いした頃は60代の瀬戸内寂聴さん。
失礼ながら、その年とは思えない、
とても若やいだ可愛らしい声と、
つやつやした肌と頭皮、さらに
小柄な体全体から漂う色気が印象的でした。

大作家なのに、少しも偉ぶることなく、
自分のようなぺいぺいの若造にも
また地位の上の上にも態度は変わらず、
気軽にこちらに緊張させずに
接していただきました。

この気軽さが多くの人を引きつけた
魅力の一つかなと推察しました。

それから数度、お会いしたのですが、
年齢を召されても、話しぶりは変わらず、
若い時と変わらない話の速度と、
記憶力の確かさにも驚かされました。

例えば、僧籍に入られるに辺り、
とても世話になった作家で僧侶の
今東光さんの思い出、エピソード。

多くの寺から出家を拒否されたものの、
それを引き受けてくれたのが今東光さん。
(1973年9月頃?)

寂聴(瀬戸内晴美)さんは、得度出家する前に
しばらくの間、世間から身を隠していらしたそう。

その時に、今さんゆかりのお寺の堂内で、
二人で差し向かいで、これまでそして
今後のことを、しみじみと話しあったそうですが、
その際、今さんが、僧侶になれば男女の交際も
断たねばならないといったことをおっしゃったとのこと。

その際に、艶っぽい話が絶えなかった今東光さんから
そんなことを言われたのがおかしくて、思わず笑ってしまい、
「僧侶になっても、人を愛する心は、お釈迦さまも
許してくれるでしょう」と答えたそう。

後で、仏教では愛憎を断つことが悟りへの道と
気付いたけれど、今東光さんからは、
そうした叱責はなかったとのことです。

まるで目の前で今まさに、今東光さんが
しゃべり、それを聞いているかのような
描写力に、さすが作家と関心させられました。

(なお2019年には「寂聴が語る-今東光の思い出」展が、
今東光資料館で開催。平成29年に収録された
インタビュー映像「瀬戸内寂聴が語る-今東光の思い出」が
初公開。その中で、得度式に臨む寂聴さんに、今さんは、
病床から「安心していってらっしゃい」との言葉を
かけてくれたエピソードなどを述べられています)

寂聴さんは、人付き合いがよく、作家仲間だけでなく、
有名無名を問わず多くの方とお知り合いでした。

年齢を重ねるにつれ、先にそうした友人知人が亡くなる。

その思い出、エピソードをつづった追悼文はすばらしく、
新聞でそうした文章を読む度に、目の前で語っていただいた
様々な方の「人となり」の描写を思い出したものです。

追悼文の名手の瀬戸内寂聴さんの追悼文は、
どなたがお書きになるのでしょうか。

ご冥福をお祈りいたします。

瀬戸内寂聴さんの文章はもちろん、
横尾忠則さんの挿絵も見事です。

奇縁まんだら 4巻セット


〇新聞の追悼記事で思い出したけれど、
 先に亡くなられた俳優の萩原健一さん。
 トラブルがあった時にお寺にかくまった話も
 寂聴さんから伺ったなー。
 預けたお寺の住職が萩原健一さんが、
 こっそりと抜け出して困っているとの連絡があった。
 寂聴さんは、「さすがショーケン。そうこなきゃ」
 と心の中で快哉。
 住職には一応、わびはいれたが、嬉しかったそう。
 萩原健一さんには、以前にも記したが、
 お遍路の話を伺ったなー。
 すごい人なんだけれど、目は愛嬌があって、
 吸い込まれるような魅力のある人だったなー。

〇瀬戸内寂聴さんのお話は、実話で、
 ご自身が体験したことだけれど、
 今から考えると、「作家的」な
 脚色はあったのかもしれないなー。
 (亡くなられた野坂昭如さんは、
 周囲にとても気を遣い、人を喜ばせることが
 お好き。政治信条、戦争など核心的なところは異なるが、
 自分を卑下したり、失敗談は、ちょっと盛っていたかも。
 周囲、相手へのサービス精神だったのかなー)



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