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「とうふは誰も傷つけない」「とうふのような人になりたい」「お豆腐狂言」「旅では豆腐」。

「ワインに旅をさせてはいけない」というフレーズが
フランスだか、どこかの国にあるんだそうです。

これは、生産された場所で飲むワインが
一番おいしいということのよう。

実際、防腐剤も不要で、輸送で揺られたり、
温度変化もなしで、ワインにとって
非常にいい状態が保たれるようです。

日本だと「豆腐に旅をさせてはいけない」
と言われているのだそう。

今は、パッケージも開発され、
流通も発達していますが、
本来の豆腐の柔らかさ、日持ちから考えれば、
やはり作られた場所で食べるのが
いいのかもしれません。

父がよく言っていたのは、
「旅ではとうふ」という言葉でした。

この意味は?

とうふは安価で、どこにでもあり、
様々な料理があり、そこそこ美味しく、
食中毒であたることも少ないので、
旅先で、食べるものに困ったら、
豆腐料理を食べていれば、間違いはない
という旅での用心だったようです。

「とうふ」が美味しい京都。

その地の狂言の茂山千五郎家は、
「お豆腐狂言」をモットーにされているそう。

《私達、茂山千五郎家では「お豆腐のような狂言師」
という言葉が語り伝えられています。
その言葉は、二世千作(十世千五郎正重)への
悪口に由来しております》。

どんな悪口なのか?

狂言というのは、能舞台で演じるもの
と思われていた時代に、
それ以外の様々な場所に出向いて
狂言を演じつづけたところから、
「お豆腐のような奴だ」と言われたのだそう。

それがなぜ悪口になるのか?

というのも、京都では、お豆腐というのは、
おかずに困ったときの、間に合わせなんですね。

「茂山の狂言はお豆腐や」というのは、
本来の能舞台でない場所で行なわれる、
間に合わせの狂言という意味なのですね。

その悪口をわざわざ家のキャッチフレーズに
したのはなぜなんでしょう?

《しかし二世千作は「お豆腐で結構。それ自体高価でも
上等でもないが、味つけによって高級な味にもなれば、
庶民の味にもなる。お豆腐のようにどんな所でも
喜んでいただける狂言を演じればよい。
より美味しいお豆腐になることに努力すればよい。」》
と、言われたとのこと。

豆腐の徳ですね。

《それ以来、わたしたちは家訓としてこれを語り伝え、
「余興に困ったら、茂山の狂言にでもしとこか」と、
気軽に呼ばれることをむしろ私達は喜びたいと思っています。

いつの世も、どなたからも広く愛される、
飽きのこない、そして味わい深い。
そんな「お豆腐狂言」を、広めていきたいと考えております》。

《お豆腐狂言とは》
http://www.soja.gr.jp/about/#aboutOtofuKyogen

この言葉に出会ったとき、非常に感動しました。
悪口さえも、前向きに取らえ直すその心意気、
そしてその言葉通りの活動を続けてこられたことに。

そして最近、もう一つ、「とうふ」に関する
素晴らしい表現に出会ったのです。

2012年5月15日、東京新聞朝刊の投稿欄に掲載された、
13歳の中学生の《「とうふ」のような人に》との投書です。

次のように始まります。
《「とうふは誰も傷つけない。それってすごい、
強くないけどすごいこと」》

小さい時に、読んだ本の中に書いてあった
言葉なんだとか。友達が仲間はずれに
された時に出会ったので、
よけい私の心にしみたのかもと記しています。

《そして、そのとうふのような人間になりたい
と思いました》と。

気がつかないうちに誰かを傷つけていることもあり、
ほめ言葉と思っていても、聞く人によっては悪口と
とらえられることもあり、
誰も傷つけない人になるのは難しいけれど、
それでも、《とうふのように誰も傷つけない人に
なりたい》と。

これからの季節、美味しい冷や奴を食べながら、
「とうふ」の良さを考えたいですね。

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nikitoki

2014年6月15日、渋谷のセルリアンタワー内にある能楽堂で、茂山逸平さんと、尾上菊之丞さんの二人会(逸青会)に行ってきました。菊之丞さんの舞踏「傀儡師」、狂言「鎌腹」そして元は落語の「崇徳院」を題材にした新作狂言「崇徳院」の3演目。非常に面白かったです。
by nikitoki (2014-06-16 00:48) 

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