京都・知恩院の「未完の瓦」。葺き残した瓦の意味するところとは？
有名人が、それぞれの京都について語る
毎日新聞夕刊の連載「京がたり」。
3月12日はピースの又吉直樹さん。
本好き、書店好きで知られるお笑い芸人です。
毎日新聞。
《京がたり:日本再発見 又吉直樹さんの本屋 未知との出合い楽しむ
毎日新聞 2014年03月12日 東京夕刊》
http://mainichi.jp/shimen/news/20140312dde012040005000c.html
（登録しないと記事全部を読めない）本好きらしく、京都の個性あふれる書店、
「三月書房」「恵文社一乗寺店」や「ガケ書房」を
あげています。
そうした書店では、お目当ての本の隣に、
書店主お勧めの作者の本などが並んでおり、
思いがけない新たな出会い、刺激があると語っています。
又吉さんは、本、書店のほかに、仏像にも
小学3年生の頃から興味を持ち、京都のお寺に
通っていたそう。
知恩院の御影堂の瓦について取り上げています。
現在、ちょうど瓦を含め、２０１９年完成を目指し
修理工事中ですけれど、この屋根には、
《てっぺんの中央部に瓦が２枚重なっていて、
まるで置き忘れたよう》な瓦が4枚あるんですね。
これは、「未完の瓦」とか「葺き残しの瓦」と呼ばれています。
あなたはご存じでしたか？
自分もはっきりいつとは覚えていないのですが、
親戚に連れて行ってもらった時だか、
修学旅行で行ったときだかに、
この瓦について教えてもらいました。
あの日光東照宮の眠り猫などで知られる
名工・左甚五郎が瓦をこのように置いたとも。
その理由、意味は？
又吉さんは、
《「完成してしまうと、後は滅びるだけ」との考えから、
あえて瓦を残し「今も発展途上」と縁起をかついでいるそうです》
と述べています。
氏がはじめてこの話を聞いたのは中学生の時。
どう思ったのか？
《「でもやっぱり、物事は未完成のままではいけないんとちゃうか。
完成した瞬間の輝きをそのまま切り取ることはできないか」
という結論にたどり着いたんです》。
そして、中学の同級生と「線香花火」
という名のコンビを組んだとか。
その意図するところは、
《「瞬間の輝きを永遠に残そう」》。
しかしこのコンビ名は皆様、ご推察の通り、
《「一時的ですぐに勢いのなくなる物の例え」》であるので、
結局解散してしまったのだとか。
左甚五郎があえて残したままにしたとされる4枚の瓦。
それは、
《「満つれば欠くる世の習い」―満月になった月がやがて欠けていくように、
栄華を極めたものはやがて衰退に至る―という意味の故事にちなんで、
わざと瓦を置くことで、まだ知恩院が発展途上であることを示しているのです》。
こうした考えで、わざと未完にするということは、
知恩院の屋根に限らずほかでもあり、
《例えば、日光東照宮の陽明門では柱12本の内
1本だけを逆さにしています》。
その底にある考えは？
《古来では完璧なものには魔が潜むとされ、
こうして未完成な部分を残すことで難を逃れようと願ったのです》。
知恩院のサイトでは、
《これは人間も同じで、自分を不完全な人間だと思うからこそ、
より頑張ろうとしたり、他者と補い合おうとする気持ちが
生まれるのではないでしょうか》
と書かれています。
人はどこまでいっても未完成な存在。
完全、完璧なのは仏のみ。
そのため人は生涯をかけて完成を目指す。
（人は悟りを得ないと輪廻転生を繰り返します）
個人的にはそう解釈しています。
〇日光東照宮の建設に
大きな力を発揮した天海僧正。
上のように東照宮の未完は僧正の考えとも。
〇未完の完成
未完がゆえに常に向上を目指し続ける。
それゆえに長く続き、強い。
〇「永遠の未完成、これ完成なり」
宮沢賢治。「農民芸術概論」。
《知恩院》
《国宝・御影堂ものがたりINDEX > 第5回 御影堂の瓦の歴史》
http://www.chion-in.or.jp/13_mieido_daishuri/mie_mono/mie_mono_05.html
ほかに魔除けのために天井に置いた「忘れ傘」も有名。
《知恩院の七不思議》《忘れ傘》
http://www.chion-in.or.jp/04_meiho/fus/was.html
9万枚にも及ぶ瓦の寄付を呼びかけています。
《瓦志納のご案内》
https://www.chion-in.or.jp/13_mieido_daishuri/kawara.html
追記 2023年2月9日
〇アクセスを多く頂いています。
毎日新聞夕刊の連載「京がたり」。
3月12日はピースの又吉直樹さん。
本好き、書店好きで知られるお笑い芸人です。
毎日新聞。
《京がたり:日本再発見 又吉直樹さんの本屋 未知との出合い楽しむ
毎日新聞 2014年03月12日 東京夕刊》
http://mainichi.jp/shimen/news/20140312dde012040005000c.html
（登録しないと記事全部を読めない）本好きらしく、京都の個性あふれる書店、
「三月書房」「恵文社一乗寺店」や「ガケ書房」を
あげています。
そうした書店では、お目当ての本の隣に、
書店主お勧めの作者の本などが並んでおり、
思いがけない新たな出会い、刺激があると語っています。
又吉さんは、本、書店のほかに、仏像にも
小学3年生の頃から興味を持ち、京都のお寺に
通っていたそう。
知恩院の御影堂の瓦について取り上げています。
現在、ちょうど瓦を含め、２０１９年完成を目指し
修理工事中ですけれど、この屋根には、
《てっぺんの中央部に瓦が２枚重なっていて、
まるで置き忘れたよう》な瓦が4枚あるんですね。
これは、「未完の瓦」とか「葺き残しの瓦」と呼ばれています。
あなたはご存じでしたか？
自分もはっきりいつとは覚えていないのですが、
親戚に連れて行ってもらった時だか、
修学旅行で行ったときだかに、
この瓦について教えてもらいました。
あの日光東照宮の眠り猫などで知られる
名工・左甚五郎が瓦をこのように置いたとも。
その理由、意味は？
又吉さんは、
《「完成してしまうと、後は滅びるだけ」との考えから、
あえて瓦を残し「今も発展途上」と縁起をかついでいるそうです》
と述べています。
氏がはじめてこの話を聞いたのは中学生の時。
どう思ったのか？
《「でもやっぱり、物事は未完成のままではいけないんとちゃうか。
完成した瞬間の輝きをそのまま切り取ることはできないか」
という結論にたどり着いたんです》。
そして、中学の同級生と「線香花火」
という名のコンビを組んだとか。
その意図するところは、
《「瞬間の輝きを永遠に残そう」》。
しかしこのコンビ名は皆様、ご推察の通り、
《「一時的ですぐに勢いのなくなる物の例え」》であるので、
結局解散してしまったのだとか。
左甚五郎があえて残したままにしたとされる4枚の瓦。
それは、
《「満つれば欠くる世の習い」―満月になった月がやがて欠けていくように、
栄華を極めたものはやがて衰退に至る―という意味の故事にちなんで、
わざと瓦を置くことで、まだ知恩院が発展途上であることを示しているのです》。
こうした考えで、わざと未完にするということは、
知恩院の屋根に限らずほかでもあり、
《例えば、日光東照宮の陽明門では柱12本の内
1本だけを逆さにしています》。
その底にある考えは？
《古来では完璧なものには魔が潜むとされ、
こうして未完成な部分を残すことで難を逃れようと願ったのです》。
知恩院のサイトでは、
《これは人間も同じで、自分を不完全な人間だと思うからこそ、
より頑張ろうとしたり、他者と補い合おうとする気持ちが
生まれるのではないでしょうか》
と書かれています。
人はどこまでいっても未完成な存在。
完全、完璧なのは仏のみ。
そのため人は生涯をかけて完成を目指す。
（人は悟りを得ないと輪廻転生を繰り返します）
個人的にはそう解釈しています。
〇日光東照宮の建設に
大きな力を発揮した天海僧正。
上のように東照宮の未完は僧正の考えとも。
〇未完の完成
未完がゆえに常に向上を目指し続ける。
それゆえに長く続き、強い。
〇「永遠の未完成、これ完成なり」
宮沢賢治。「農民芸術概論」。
《知恩院》
《国宝・御影堂ものがたりINDEX > 第5回 御影堂の瓦の歴史》
http://www.chion-in.or.jp/13_mieido_daishuri/mie_mono/mie_mono_05.html
ほかに魔除けのために天井に置いた「忘れ傘」も有名。
《知恩院の七不思議》《忘れ傘》
http://www.chion-in.or.jp/04_meiho/fus/was.html
9万枚にも及ぶ瓦の寄付を呼びかけています。
《瓦志納のご案内》
https://www.chion-in.or.jp/13_mieido_daishuri/kawara.html
追記 2023年2月9日
〇アクセスを多く頂いています。
フジテレビ、ピース又吉直樹＆NEWS加藤シゲアキがMCを務める「タイプライターズ～物書きの世界～」の2017年1月4日放送で、「未完の瓦」が紹介されたようで、この記事にアクセスが集中しています。
http://www.fujitv.co.jp/b_hp/typewriters/
by nikitoki (2017-01-04 08:27)