SSブログ

新海誠監督の「すずめの戸締まり」を見る。震災被害者の鎮魂歌。

《ネタバレ注意!》
《映画「すずめの戸締まり」の重要な設定、
結末などについて記しています。
未見の方はご注意下さい。》

2023年1月1日、ほぼ毎年恒例となっている
新年の映画鑑賞に出かけました。

歩いて行ける一番近い映画館は
コレド室町2の3階に入っている
TOHOシネマズ日本橋。

ラインナップの中から選んだのは、
新海誠監督の「すずめの戸締まり」です。

公式サイト
https://suzume-tojimari-movie.jp/

ほとんど事前知識のないままの鑑賞です。
いえ事前に知っていたのは、歴史学、民俗学から
万葉集を読み解く上野誠國學院大学教授の
新聞に掲載されていた寄稿文。
(2022年12月29日)
この映画の大きな背景を知ることができ、
一気に興味がわき、見たいと思ったのでした。

午後3時5分から、TOHOシネマズ日本橋、スクリーン7。
(1日、ファーストデー割引で1200円)
ほぼ満席です。

公式サイトHP(TOHOシネマズのサイトにも)に記された注意書き
《本作には、地震描写および、緊急地震速報を受信した際の
警報音が流れるシーンがございます。警報音は実際のものとは
異なりますが、ご鑑賞にあたりましては、予めご了承いただきます様、
お願い申し上げます。》

これからわかるように、地震にまつわる映画です。

九州は宮崎県南部の静かな町で叔母・環と
二人で暮らす高校2年生17歳の
少女・岩戸鈴芽(すずめ)。

登校中の、坂の途中で「扉を探している」という
大学4年の宗像草太に出会います。

彼の後を追って、山中のリゾート地廃墟で
見つけたのは古い扉。
そこに引き寄せられ扉をあけ、
向こうに行こうとしてしまう鈴芽。

扉の向こうは、死者の世界「常世(とこよ)」。
そこには、地震をひきおこしてしまう「みみず」が。

扉(後ろ戸)、そして要石(かなめいし)が、
みみずを押しとどめ、災害を防いでいるのでした。

しかし、鈴芽は要石を引き抜いてしまいます。
引き抜かれた要石は、謎の猫ダイジンに変化します。

扉に駆けつけた草太。
彼は、扉が開くと災いが生じてしまうため、
扉を閉めて鍵をかける“閉じ師”なのでした。

けれど、要石から変化ししゃべる猫ダイジンにより、
草太は子ども用の椅子に姿を変えられてしまうのでした。

その椅子は、亡くなった母が、5歳の誕生プレゼントとして
作ってくれた鈴芽用の小さな椅子。
しかしなぜか脚が1本欠けています。

逃げるダイジン。捕まえるため、
3本脚の椅子の姿で走る草太。
鈴芽は追いかけます。

2人と1匹は、日本各地を旅します。

宮崎からフェリーで四国、愛媛県八幡浜市に。
そこでも扉が開き、みみずが飛び出します。
開いた扉を閉める鈴芽と草太。

四国を横断し、明石海峡大橋を渡り、神戸に。
ここでも廃墟の遊園地の観覧車の扉が開きます。
(おそらく奥摩耶遊園地。小さいころ、
叔母などに連れて行ってもらった。懐かしい)

扉を閉めた二人は、草太が住む東京に。
アパートを訪れたすずめは、閉じ師の古文書をみます。
また草太の大学の友人芹澤朋也に出会います。

御茶ノ水の聖橋の下、地下鉄が
出てくるトンネルの奥で扉が開きます。

巨大なみみずが出てきて、東京の上空を覆います。
とめなければ大震災が発生し、100万人もの死者も。

すずめは、被害を防ぐために椅子になった草太を
要石として、突き刺し、震災を防ぎます。

草太を元に戻し、助けるたけにどうしたらよいか。
病気で入院していた草太の祖父に会うすずめ。
宗像羊朗は、すずめは小さな頃、一度「常世」に行っている。
そこに入った扉を閉めれば……と教えるのです。

思い当たることがあるすずめ。
御茶ノ水駅前でオープンカーに乗った
芹澤朋也に声をかけられます。
そこに出くわしたのが叔母の環。

三人そして、謎の猫ダイジンとともに、
鈴芽が小さい頃、入った扉を探す旅に
出ることになります。

途中、日本に二つあるもう一つの要石
(東京、江戸城、皇居の下?)が
変化した猫サダイジンも旅に加わります。

たどりついたのは、東日本大震災で
大きな被害を受けた福島。
鈴芽の故郷です。

東日本大震災で、鈴芽は、
母・椿芽(つばめ)を亡くしていたのでした。
1本脚がかけた椅子。
それは地震で失われたのでした。

小さな頃に入った扉(後ろ戸)を見つけた鈴芽。
要石となっていた草太を見つけます。

自分がかわりに要石となると言う鈴芽。
ダイジンと協力し、草太を引き抜きます。

「生きたい」という草太。
同じ気持ちであることを確認した鈴芽は、
椅子に口づけをしたところ、
蒼太は元の姿に戻ります。

2匹の猫ダイジン、サダイジンは、再び要石となり、
鈴芽と草太は、みみずに付き刺し、災害を防いだのでした。

みみずとの戦いを終えた鈴芽。
常世で小さな頃の自分を見つけます。
ここで鈴芽は、母の作ってくれた椅子を拾っていたのでした。

過去の自分に向き合う17歳の鈴芽。
映画冒頭にも登場した夢のシーンです。

自分の前に立つ女性は母と思っていたのですが、
実は未来の自分の姿なのでした。

「会いたい」とずっと母を探していた鈴芽は、
母には出会えません。
会えたのは未来の自分。

鈴芽は、母の死をこうして受け入れ、
幼い自分に将来を約束するのでした。

日常(現世)に戻り、自宅から自転車で
海が見える坂を下りながら登校する鈴芽。
そこで再び出会ったのは……。



あらすじを書いただけで、疲れてしまいました。
色々と掘り下げて書きたいことはあるのですが、
はしょります。

宮崎、愛媛、神戸、東京と
出てくる場所が個人的に、
とてもなじみ深いところが多かったので、
思い入れを持ってみることが出来ました。

また途中、昭和の名曲が数多く流れます。
(チェッカーズ、荒井由実、井上陽水、斉藤由貴など)
若い人は知らない曲も多いと思いますが、
昭和時代のおじさん、おばさんには、刺さる曲ばかり。
(神戸のスナック。御茶ノ水から福島までのドライブ中。
後者は芹澤が環のために選曲したといっているが、
40前後の環のためにかけるとしても古すぎる)

これらの選曲は、広い世代に受け入れられるための工夫でしょうか。

〇読売新聞、2022年12月29日。(読者限定)
《新海誠監督「すずめの戸締まり」 世の幸せのため犠牲に…上野誠・国学院大教授 寄稿》
https://www.yomiuri.co.jp/culture/cinema/20221228-OYT8T50035/
 「戸」「常世」「要石」「人柱」「代受苦」などが物語の根底にあると指摘。

〇映画館では、新海誠監督の映画のスピンオフ小説
 「小説すずめの戸締まり~環さんのものがたり~」が
 配布されました。
以下は、小説版の「すずめの戸締まり」。

小説 すずめの戸締まり (角川文庫)

新海誠監督作品 すずめの戸締まり 公式ビジュアルガイド


〇怪我を治療するため草太を家に入れ、自室に案内する鈴芽。
 部屋の中の描写がある。机の上(本棚?)のツルゲーネフの
 「はつ恋」が個人的にツボ。

〇父(男性)の不在

〇円環構造

〇死者(その土地で暮らしていた人々)の声を聴く
 死者の鎮魂。

〇神戸の廃墟の遊園地 それを含む産業遺産を巡るツアー。
 《神戸の歴史に思いを馳せる
「神戸開港の近代~現代の産業遺産群をめぐるプレツアー」の申し込みがスタート》
https://www.city.kobe.lg.jp/a64051/kanko/kisyasiryo/202211/696286929609.html



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。