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94歳の理容師・故加藤寿賀さん。「なぜ、はたらくのか」。「人の役に立つために働くんですよ」。

新橋駅のガード下に、
わずか3坪余りの小さな理容店[バーバーホマレ]がありました。

加藤寿賀さんという90歳を過ぎた方が一人で営んでいらっしゃいました。

東京新聞の連載、ビートたけしさんとの対談番組「たけしの日本教育白書」、
またフジテレビのノンフィクション番組などで、取り上げられたので、
加藤さんと、この店のことをご存じの方がいらっしゃるかもしれません。

15歳の時から、およそ80年間、
ずっと

理容師として働き続けた加藤さん。

その言葉をまとめた遺作が10月に、発刊されました。

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1915年、大正4年に東京・京橋に生まれた加藤さん。
お父さんは、伝馬船(てんません)で、築地の魚河岸に魚を運ぶ仕事をしていた方。
お母さんは、女学校出で優しくしつけに厳しい方だったそうです。

小学校二年生7歳の時に体験した関東大震災。
隅田川に逃げた加藤さんですが、周囲は真っ赤に燃え、
川には多くの死体があったそうです。

10歳の時、お母さんが病死し、お父さんが再婚。
しかし継母とうまくいかず、15歳の頃に、
親の印鑑を使って女学校を自主退学し、
そのまま家出してしまったのです。

15歳で叔母さんの紹介で、銀座で、理容師修行を始め、
19歳で理容師試験に合格して資格を得ます。

当時まだ女性の理容師は珍しく、
お店でも、また国家試験の合格者も加藤さんだけだったそうです。

講習会で出会った兄弟子・善次さんと恋に落ち、
1939年昭和14年、結婚。2人の娘さんにも恵まれます。

東京都中央区日本橋馬喰町に開店した
理容店「バーバー加藤」は繁盛し、
わずか3年で開店時の借金を完済するほどだったそうです。

しかし、第二次世界大戦が始まります。

1943年、旦那さんの善次さんは召集され、戦地に。
残された加藤さんは、東京大空襲で、
家も店も、何もかもが焼け、失ってしまったのです。

生きながらえたのは、幸運といえるかもしれません。
東京大空襲の折には、浅草橋の防空壕に避難。
けれど余りの暑さに飛び出したそう。
それが結果的に身を助けました。
我慢して防空壕に残った人は、
すべて蒸し焼き状態で亡くなってしまったのです。

関東大震災、そして東京大空襲と、
東京が焼け野原になるのを二度も体験した加藤さんですが、
その後も、不幸が彼女を襲います。

自宅と店を失った加藤さんは、府中の車両工場で委託理容師になります。

1945年、夫の善次さんが復員。
けれど戦艦で爆撃にあい、耳が不自由になっていました。

理容師に復帰するのは難しいとは理容店再開をあきらめ、
とうどん店を始めることにした矢先、交通事故に遭い他界してしまいます。

以来、加藤さんは喪に服し、髪を伸ばすのをやめ、
生涯独身で過ごすことになります。

そんなつらい目にあっても、
「待ってくれる人がいるから」と決して、
ハサミを置かず、働き続けた加藤さん。

身を粉にし、働き、念願の自宅兼店舗「バーバーホマレ」を、
JR新橋駅の高架下に構えたのは、昭和28年(1958年)。
加藤さん37歳のときでした。

東海道線の高架下。
店の上の2階の自宅の住まいは、狭く、
始終いきかう電車の轟音が鳴り響いていましたが、
「これで親子3人1つ屋根の下で暮らせる」と嬉しかったそうです。

しかしその後、娘さんの一人を、病気で失う
という試練が、加藤さんの身にふりかかりました。

多くの常連さんに愛され、支えられ、2009年末まで、
ずっとハサミを持ち、働き続けた加藤さん。

2010年4月6日、心不全で永眠されました。
94歳でした。

80年間、ずっと現役で働き続けた加藤さんの信条。

それは、
《はたらくとは、はた(端=周囲)をらく(楽)させること。》
《「人様に楽させて、楽しんでもらうために働くんです」》

手に職を持っていたことについて加藤さんは、
《理容の技術がずっと私を助けてくれた。
身についたものは自分を裏切らない」》
と。

加藤さんの珠玉の言葉をちりばめられた本が発行。

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何度も読み返したい本です。

フジテレビ、ノンフィクション。
《『新橋3丁目のクロニクル
 ~93歳・理容師の人生~』》
http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2008/08-302.html

フジテレビの開局50周年記念番組、2009年11月22日。
「たけしの日本教育白書~ニッポン人の忘れもの~」
http://www.fujitv.co.jp/wasuremono/kyoiku2009/contents.html

《ぶらり途中下車の旅》、2009年9月19日。
http://www.ntv.co.jp/burari/090919/info04.html

「とにかくね、一生懸命やっていれば、必ずだれかが必ず見ているよ」

「バーバーホマレ」 港区新橋3、TEL 03-3571-1294





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